新幹線で長距離移動する人が増える一方、「新幹線に乗ると酔うようになった」と感じる人も増加しています。かつては「乗り物酔い=バスや車」というイメージが主流でしたが、最近は高速移動する新幹線でも酔いを訴える声が目立ち始めています。しかも、これまでまったく酔わなかった人が、突然気分が悪くなるというケースも少なくありません。
この「新幹線酔い」は、単なる気のせいではなく、医学的・環境的な要因が複雑に絡み合っている可能性があります。特に、スマホの長時間使用、トンネル内での気圧変化、あるいは生活習慣の乱れなどが引き金となることが分かってきました。
この記事では、なぜ新幹線で酔う人が増えているのか、その意外な原因と背景を掘り下げながら、酔いやすい人の特徴や具体的な対策法までを徹底解説します。さらに、すぐにできる乗車中のケア方法や、次回に向けた予防のコツも紹介しますので、新幹線に乗るたびに体調が悪くなるという方はぜひ参考にしてください。
原因が分かれば、対処法も見えてきます。新幹線での快適な移動を取り戻すために、今こそ「新幹線酔い」について正しく知ることが必要です。
新幹線で酔う人が急増中?原因と傾向を徹底解説
新幹線特有の揺れが引き起こす違和感とは
新幹線の揺れは、車やバスと比べると穏やかに感じられるかもしれません。しかしながら、一定の速度で高速走行している新幹線特有の微細な横揺れや上下の振動は、人間の体にとっては意外にもストレスとなることがあります。特に、東海道新幹線や山陽新幹線では300km/h以上の速度で走行しているため、わずかな揺れが継続的に体に伝わり、小脳を通じて平衡感覚を司る神経に影響を及ぼすことがあります。
たとえば、ある30代女性は、普段は車でも酔わない体質でしたが、名古屋から東京までの新幹線移動中に突然吐き気を感じたといいます。そのとき彼女はスマホで長時間SNSを見ており、視覚と体の動きのズレが重なったことが原因だったと後から判明しました。
また、新幹線の座席は車のように個別にバランス調整されていないため、揺れをダイレクトに感じやすい構造になっています。特にトンネルの多い区間や急カーブの区間では、わずかながらも体に感じる違和感が積み重なり、酔いにつながりやすくなるのです。
したがって、新幹線の揺れは表面的には小さくても、実際には乗り物酔いを誘発する十分な要因であると考えられます。
車酔いと新幹線酔いの違い
車酔いと新幹線酔いは、同じ「乗り物酔い」というくくりの中に分類されますが、その原因や症状の出方にはいくつかの違いがあります。
まず、車酔いは急ブレーキや発進・停止のたびに体が不規則に揺れることによって引き起こされます。視覚情報と実際の体の動きとのズレが激しいため、小脳が混乱を起こし、結果として気分不良や吐き気といった症状が現れやすくなります。
一方、新幹線酔いは、一定の速度で走行しながらも微細な振動が長時間継続することが主な要因です。この微細な揺れは自律神経に働きかけ、乗車中にだんだんと気分が悪くなってくるタイプが多いのが特徴です。
たとえば、福岡在住の40代男性は、車での移動は平気なのに、出張の際の新幹線に乗ると決まって吐き気に襲われるようになりました。医師の診断によると、長時間の視覚集中と揺れの連続が原因で、脳の平衡感覚にズレが生じていたそうです。
つまり、同じ「酔い」であっても、原因のメカニズムが異なるため、対策法もそれぞれ違ってくるのです。
最近になって酔うようになった人の共通点
「昔は酔わなかったのに、最近新幹線で気分が悪くなるようになった」という声が増えている背景には、現代人の生活習慣の変化が大きく関係しています。
まず一つ目の共通点として挙げられるのが「スマホの長時間使用」です。新幹線の車内でスマートフォンを見続けると、視覚情報と車体の揺れによる平衡感覚の不一致が起こり、自律神経が乱れて酔いやすくなるのです。
また、日頃から運動不足で平衡感覚が衰えている人や、睡眠不足が続いている人も、酔いを感じやすくなる傾向があります。とくにデスクワーク中心の生活で運動をほとんどしない人は、三半規管の感度が鈍っているケースがあり、少しの揺れでも体が敏感に反応してしまうのです。
たとえば、あるIT企業勤務の女性は、以前は大阪-東京間の移動も平気でしたが、最近では新幹線に乗るたびに気分が悪くなり、仕事に支障をきたすようになったと話しています。彼女は日々の運動習慣を見直し、さらに乗車前に軽いストレッチを行うようにしたことで、症状が改善したそうです。
このように、生活スタイルの変化が新幹線酔いの新たな原因となっていることから、対策も生活全体を見直す必要があります。
新幹線で酔いやすい人の特徴とは
三半規管が弱い人が感じる症状
乗り物酔いを引き起こす主な要因の一つが、三半規管の感受性です。三半規管は内耳にあり、体のバランスを保つために重要な役割を果たします。ここが過敏であると、新幹線の微細な揺れや加速度の変化にも敏感に反応してしまい、吐き気やめまいを感じやすくなります。
とくに、日常的に運動不足の人は三半規管の働きが低下している可能性があります。バランス感覚が衰えていると、移動中の揺れに体がついていけず、小脳との連携が崩れ、神経にストレスが加わります。
たとえば、ジム通いをやめて半年になる50代男性が、博多から東京への移動中に初めて強い酔いを経験しました。彼は普段デスクワーク中心の生活で、日頃ほとんど運動をしていなかったそうです。耳鼻科の検査で、平衡感覚の低下が指摘されました。
三半規管が弱い体質の人は、新幹線だけでなくエレベーターの揺れや飛行機でも不調を感じる傾向があります。そのため、日常的にバランスボールや片足立ちなど、簡単な体幹トレーニングを取り入れることが、対策として有効です。
睡眠不足・空腹・ストレスの影響
新幹線での酔いには、体調管理が大きく関係します。特に睡眠不足、空腹状態、そして精神的なストレスは、自律神経を乱れさせ、酔いやすい体内環境を作ってしまいます。
なぜなら、これらの状態にあると交感神経が優位になり、体が常に緊張している状態になるからです。そのため、新幹線の揺れや景色の流れといった刺激を処理しきれず、結果として酔いの症状が出てしまうのです。
たとえば、ある大学生が朝一番の新幹線で実家へ帰省した際、前日は徹夜で準備をしていてほぼ寝ていない状態でした。朝食もとらず、空腹のまま乗車し、わずか30分後には強い吐き気に襲われました。このように体調が整っていないときに長時間の移動をすると、体の負担は倍増します。
そのため、乗車前には睡眠を十分に取り、軽く食事を済ませてから乗るように心がけることが酔いの予防につながります。また、出発前にリラックスできる音楽を聴く、ストレッチをするなどして緊張を和らげることも効果的です。
年齢や体質による個人差
新幹線酔いのしやすさには、年齢や体質の違いが大きく影響します。一般的に、子どもや高齢者は自律神経の働きが不安定であり、揺れや視覚刺激に敏感に反応しやすいため、乗り物酔いを起こしやすい傾向があります。
一方、大人でも体質によっては新幹線に弱い人もいます。たとえば、低血圧の人は脳への血流が不安定になりやすく、長時間座っているだけで立ちくらみや吐き気が生じることがあります。また、花粉症や鼻炎持ちの人は、耳の奥の気圧調整がうまくいかず、乗車中に不快感を覚えやすいとも言われています。
たとえば、60代の女性が新幹線で孫に会いに行くたびに吐き気を感じるようになり、医師の診察を受けたところ、加齢による自律神経の調整力の低下が原因であることが分かりました。医師のアドバイスで酔い止めを服用し、座席の選び方を工夫したことで症状が軽減しました。
つまり、新幹線酔いは年齢や体質によって個人差があるため、自分の身体の特徴を知ったうえで適切な対策を講じることが重要です。
新幹線酔いの主な原因5選
トンネル通過による気圧変化
新幹線酔いの大きな要因のひとつが、トンネル通過時に発生する微妙な気圧の変化です。新幹線は高速でトンネルを抜ける際、車内にわずかな圧力の変動が生じることがあります。これが耳の奥にある内耳に刺激を与え、平衡感覚を乱すことにつながります。
たとえば、東海道新幹線で静岡〜神奈川間を移動中、何度も短いトンネルを通過する区間があります。50代の男性会社員は、その区間で耳の奥が詰まるような感覚を覚え、その直後から吐き気を感じたといいます。耳抜きがうまくできない人や、気圧の変化に弱い人はこのような症状が出やすい傾向があります。
この現象は飛行機でも起こりますが、新幹線では「気づかない程度の変化」が繰り返されることで、小さな違和感が積み重なり、最終的に酔いとなって現れることがあるのです。
そのため、耳が詰まるような感覚がある場合は、唾を飲み込んだりガムを噛んだりすることで気圧調整を助けると良いでしょう。
スマホや読書による視覚のズレ
スマートフォンの操作や本の読書は、新幹線酔いの原因として非常に多く報告されています。これは、目で見ているものが動かない(固定された画面や紙面)にもかかわらず、体は新幹線の揺れを感じているという、「視覚と体感のズレ」が原因です。
この視覚と体感の不一致は、脳にとって大きな混乱を引き起こします。特に小脳は体のバランスを保つ司令塔ですが、目から入る情報と内耳からの揺れの感覚が一致しないと、混乱を起こしやすくなり、自律神経が乱れて酔いの症状が出てくるのです。
たとえば、ある高校生は新幹線に乗るたびにスマホで動画を観るのが習慣でしたが、30分も経たないうちに目が回るような感覚に襲われるようになったといいます。これは典型的な視覚のズレによる新幹線酔いの例です。
このような場合には、なるべく遠くの景色を眺めたり、外をボーッと見ることで視覚と身体の感覚を一致させることが効果的です。また、動画や読書は30分に一度は休憩を取るようにすると、神経の過負荷を避けることができます。
乗車前の食事やアルコール摂取
新幹線に乗る前の飲食内容も、酔いやすさに大きく影響します。特に、空腹すぎたり、逆に満腹すぎる状態、あるいはアルコールの摂取は、乗車中の消化器系の働きを不安定にさせ、吐き気を引き起こす要因となります。
新幹線は高速で移動するため、胃腸の中身も揺れの影響を受けやすくなります。アルコールを摂取していると血管が拡張し、車内の気圧や温度変化に敏感に反応するようになり、体調を崩しやすくなります。
たとえば、40代の男性が東京駅で昼食とビールを楽しんだ直後に乗車したところ、名古屋に着く頃には強い吐き気を感じてトイレに駆け込んだというエピソードがあります。このケースでは、油物の多い食事とアルコールが原因と考えられます。
乗車前には、軽めで消化に良い食事を心がけ、できるだけアルコールは避けるのが無難です。温かいお茶やスポーツドリンクで水分補給をしておくと、胃腸が安定しやすくなります。
酔いにくい座席はどこ?おすすめ席ガイド
進行方向と窓側の選び方
新幹線で酔いやすい人にとって、座席の位置選びは極めて重要です。とくに「進行方向に向かって座ること」と「窓側に座ること」が、酔いを軽減するポイントになります。
進行方向に背を向けて座ると、脳が「自分がどちらに動いているのか」を正確に把握できず、揺れや加速の違和感が強くなります。その結果、自律神経が混乱して酔いを引き起こすリスクが高まるのです。
また、窓側の席を選ぶと、外の景色を視野に入れることができます。遠くの景色を見ることで、視覚と体感の動きが一致しやすくなり、脳が揺れを受け入れやすくなるのです。
たとえば、30代の女性がこれまで通路側にしか座ったことがなかったが、友人の勧めで窓側の進行方向の席に変えてみたところ、酔いが大幅に軽減されたという事例があります。
したがって、予約時には進行方向と窓側の席を意識して選ぶことで、乗り物酔いのリスクを抑えることができます。
車両の中央部が揺れにくい理由
新幹線の車両内では、揺れ方に違いがあります。特に「車両の中央部分(=台車と台車の間)」は、構造的にもっとも揺れが少なく安定している場所です。
新幹線は通常、1両に2つの台車(車輪のついた機械)があり、端の座席はその台車の真上に位置していることが多くなります。そのため、振動や衝撃を直接受けやすく、酔いやすい人には不向きです。
一方、車両の真ん中あたりの座席は、2つの台車の間にあるため、揺れの影響を和らげてくれます。とくに「7号車〜10号車」の中央部座席は安定しており、乗り物酔い対策としてもおすすめです。
たとえば、東京〜広島間をよく利用する40代の営業職男性は、以前は毎回最後尾付近の座席を選んでいましたが、酔いやすく悩んでいたそうです。あるとき中央の席に変更してみたところ、体の負担が大きく軽減されたと実感したそうです。
つまり、可能であれば「車両中央かつ進行方向・窓側」の席を選ぶことで、物理的な揺れを減らし、乗車時の快適性を向上させることができます。
グリーン車は本当に快適なのか
新幹線のグリーン車は、一般的に「静かで快適」というイメージがあります。実際にグリーン車はシートのクッション性が高く、スペースにも余裕があるため、揺れを感じにくい環境に設計されています。
さらに、乗客の数が少ないことから、会話や物音による刺激も少なく、神経が過敏になっている人にとっては理想的な空間と言えるでしょう。また、グリーン車の多くは車両中央に設置されているため、揺れも比較的少ないという利点があります。
ただし、グリーン車に乗れば必ず酔わないというわけではありません。たとえば、ある60代女性がグリーン車に乗った際、リクライニングを深く倒しすぎたために逆に気分が悪くなってしまったというケースもあります。酔いにくさは座席の使い方や個人の体調によって左右されるのです。
つまり、グリーン車は確かに物理的には酔いにくい環境を提供していますが、それを活かすためには自分の体質や乗車姿勢を理解し、適切に使いこなすことが必要です。
乗車中にできる即効対処法まとめ
シートを倒す・首を固定する
新幹線に乗っている最中に酔いの症状が出てしまった場合、できるだけ早く身体の姿勢を安定させることが大切です。まずおすすめなのが、シートを少し倒して体をリラックスさせること、そして首の位置を固定して余計な揺れを感じにくくすることです。
新幹線の座席は自由にリクライニングできますが、倒しすぎると逆に胃が圧迫されて吐き気を誘発することもあります。そのため、背中から腰にかけて自然なアーチができる程度に軽く倒すのがポイントです。
また、首がぐらぐらと動くと小脳に余計な刺激が加わり、乗り物酔いが悪化しやすくなります。タオルや首枕などを使って首の位置を安定させることで、神経へのストレスを軽減できます。
たとえば、30代の女性が出張の移動中に酔いを感じた際、首に丸めたストールを巻いて首を固定し、リクライニングを少し倒したところ、10分ほどで症状が和らいだと話しています。
つまり、乗車中の姿勢を整えるだけでも、かなりの効果が見込めるということです。
換気と深呼吸で自律神経を整える
酔いの初期症状として現れやすいのが、呼吸の浅さや手足の冷え、軽いめまいです。これは自律神経が不安定になっているサインであり、そのまま放っておくと本格的な吐き気に進行する恐れがあります。
そこで有効なのが、車内の換気と深呼吸です。新幹線の車内は密閉性が高く、人が多い場合は二酸化炭素濃度が上がりやすくなります。窓を開けることはできませんが、座席上部の通気口を操作して空気を流すことができます。
さらに、ゆっくりと深く呼吸を繰り返すことで、副交感神経が優位になり、緊張や吐き気が和らぎます。腹式呼吸を意識すると、より効果的です。
たとえば、福岡から新大阪までの移動中に気分が悪くなった40代男性は、通気口を開けて深呼吸を意識的に行ったことで、症状が緩和したといいます。
このように、空気の流れと呼吸を整えるだけでも、身体にかかるストレスは大きく軽減されるのです。
スマホや読書は避けよう
乗車中に症状が出始めたら、すぐにスマートフォンの操作や読書をやめることも非常に重要です。すでに「視覚と揺れのズレ」により脳が混乱している状態で、さらに目を酷使する行動をとると、酔いが急速に悪化してしまうことがあります。
特にSNSのタイムラインや動画のような動きのあるコンテンツは、目と小脳に絶え間ない刺激を与え、神経系に大きな負荷をかけます。
たとえば、ある大学生はスマホゲームをプレイしながら乗車していたところ、急にめまいと吐き気を感じ、次の停車駅で途中下車したという経験を持っています。その後は、酔いそうなときには画面を見るのをやめ、窓の外の景色に集中することで改善したそうです。
つまり、症状が現れたらすぐに「見る行為」を控え、脳への情報入力を少なくすることで、酔いの進行を防ぐことが可能です。
出発前にできる!新幹線酔い予防の準備術
前日の睡眠と体調管理
新幹線酔いを防ぐためには、乗車直前の対策だけでなく、前日からの体調管理が非常に重要です。特に、睡眠不足は自律神経のバランスを崩す大きな要因となり、酔いやすさを高めてしまいます。
人の体は、睡眠中に神経系を整える時間を持っていますが、これが十分でないと小脳の働きも鈍くなり、平衡感覚が乱れやすくなります。よって、前日は最低でも6〜7時間の睡眠を確保するようにしましょう。
たとえば、ある営業職の女性は、プレゼン資料の準備で徹夜明けのまま新幹線に乗ったところ、いつもは酔わないにもかかわらず、名古屋あたりで吐き気を感じてしまったといいます。逆に、睡眠を十分とった日には酔いを感じなかったそうです。
また、風邪気味や倦怠感があるときも、乗り物酔いのリスクは高まります。体調が悪いときは無理せず、乗車の予定を見直すことも大切です。
酔い止め薬のベストな服用タイミング
酔いやすいと自覚のある人にとって、酔い止め薬の服用は有効な対策のひとつです。ただし、服用するタイミングを誤ると効果が半減することがあります。
多くの酔い止め薬は、「乗車の30分前」に服用するのが推奨されています。これは、薬が消化器から吸収されて脳に作用するまでに時間がかかるためです。遅れて飲んでも、酔いが進行してからでは効きにくくなることがあります。
たとえば、新大阪駅で酔い止めを飲み忘れた男性が、車内で慌てて服用したものの、すでに気分が悪くなっていたため、十分な効果を感じられなかったという例があります。以後は駅に着く前、自宅を出る前に確実に飲むようにし、症状が出なくなったとのことです。
なお、薬の種類によっては眠気や口の渇きを引き起こす成分を含むものもありますので、事前に医師や薬剤師に相談すると安心です。
空腹・満腹を避ける食事調整
乗車前の食事内容も、新幹線酔いの予防に欠かせません。特に「空腹」と「満腹」の両極端な状態は避けるのが鉄則です。
空腹状態では血糖値が下がり、めまいや気分不良を起こしやすくなります。一方、満腹すぎると胃が圧迫され、揺れに伴って吐き気が出やすくなります。消化の良い軽食をとるのが最も理想的です。
たとえば、朝食を抜いて東京駅に向かった学生が、乗車後まもなく空腹による立ちくらみと吐き気に見舞われたという話があります。次回以降は、おにぎりやバナナなど消化しやすく栄養のある食事を軽くとるようにしたところ、体調が安定したそうです。
また、食後すぐに乗車するよりも、食事後30分程度空けてから乗るのが理想的です。時間に余裕を持った移動を意識することで、体への負担を最小限に抑えることができます。
ツボ・ストレッチで乗り物酔いをブロック
内関(ないかん)を押すだけの簡単ケア
乗り物酔いの予防としてよく知られているのが「内関(ないかん)」というツボです。このツボは手首の内側、手のひら側のしわから指3本分下の位置にあり、乗り物酔いに効果的とされています。
内関を押すと、自律神経の働きが整い、吐き気やめまいを軽減する効果があると言われています。指でゆっくりと押し込むように刺激するのがポイントで、両手ともに1〜2分ずつ行うとよいでしょう。
たとえば、新幹線での長距離移動が多い営業職の男性は、乗車前や酔いを感じ始めたタイミングで内関を押す習慣をつけたところ、薬に頼らず快適に移動できるようになったと話しています。
内関を刺激するリストバンドも市販されており、手軽にケアしたい方にはおすすめです。
耳の後ろ・肩甲骨周辺のストレッチ
新幹線で長時間座っていると、首や肩まわりの筋肉がこわばり、血流が悪くなることがあります。これもまた自律神経の乱れにつながり、乗り物酔いの一因になると考えられています。
耳の後ろや肩甲骨周辺を軽くストレッチすることで、血行が改善され、神経系の働きも整いやすくなります。首を左右にゆっくり倒す、肩を大きく回す、肩甲骨を寄せる動きを取り入れるとよいでしょう。
たとえば、30代の女性が東京〜仙台間の移動中に肩回しストレッチを10分おきに行ったところ、以前よりも疲れにくくなり、酔いの症状が出なくなったという体験があります。
このような簡単な動きでも、体にとっては大きな違いを生むことがあるのです。
リラックス呼吸で副交感神経を優位に
乗り物酔いの根本原因のひとつが、交感神経と副交感神経のバランスの崩れです。乗車中は緊張が高まりやすく、交感神経が優位になりがちですが、これが酔いを助長します。
そのため、副交感神経を活性化させる「リラックス呼吸」を意識することが重要です。具体的には、鼻からゆっくりと息を吸い、口から細く長く吐き出すことを繰り返すだけで構いません。目を閉じながら行うと、より効果的です。
たとえば、緊張しやすい体質の男性が、移動中にスマホをやめ、呼吸だけに意識を集中させた結果、途中での不快感が明らかに軽減されたと語っています。
つまり、意識的に呼吸を整えることで、神経系のバランスを回復させ、新幹線酔いの発症を防ぐことができるのです。
子どもや高齢者に多い新幹線酔いの注意点
子ども特有の症状と対処法
子どもは大人に比べて感覚が鋭敏なうえ、体のバランス調整機能である小脳や三半規管が発達途中であるため、乗り物酔いを起こしやすい傾向があります。新幹線においても、その傾向は顕著です。
とくに3歳〜10歳前後の子どもは、自分で「気持ち悪い」「頭が痛い」と正確に伝えることが難しい場合が多いため、顔色の変化や不機嫌な様子、静かになるなどのサインを見逃さないことが大切です。
たとえば、ある親子が東京〜新大阪間を移動中、5歳の子どもが急に無言になり、目をつぶってうつむき始めました。親がすぐにリクライニングを倒し、冷たいおしぼりで首筋を冷やすなどして対処したところ、大事には至らなかったというエピソードがあります。
子どもと一緒に新幹線に乗る際は、事前に軽食をとらせておき、窓の景色に集中できるように席を選ぶとよいでしょう。さらに、あまり本やスマホに集中させず、時々ストレッチを挟むのも効果的です。
高齢者が抱えやすいリスク
高齢者もまた、新幹線での乗り物酔いに注意が必要な年代です。加齢により自律神経の調整機能が弱まり、わずかな揺れや気圧の変化でも体が過剰に反応してしまうことがあります。
また、高血圧や不整脈、糖尿病などを抱えている方は、薬の影響や血糖の変動によって体調を崩しやすく、酔いと見分けがつきにくい症状が出ることもあります。新幹線のような高速移動では、体が環境変化についていけず、思わぬトラブルを引き起こすこともあります。
たとえば、70代の男性が新幹線で名古屋から東京に向かう際、急に冷や汗とめまいを訴えたことがありました。幸い同行者がいて、すぐに乗務員を呼んで応急処置ができましたが、医師の診断では気圧の変化と軽度の脱水が原因でした。
高齢者の場合は、移動前に十分な水分補給を行い、ゆとりをもったスケジュールで行動することが、酔いの予防につながります。
介助者ができるサポートとは
子どもや高齢者と一緒に新幹線を利用する際、同行する家族や介助者のサポートが非常に重要になります。酔いの兆候に早く気づき、速やかに対応することで症状の進行を防ぐことができます。
たとえば、座席はなるべく車両の中央付近を選び、常に顔色や姿勢を観察できるように対面に座る、または横に座るのが理想です。必要であれば、背もたれの角度を調整してあげたり、手を握って安心感を与えるだけでも違いがあります。
また、酔い止め薬や冷却シート、ハンカチ、ガム、飴などを常備しておくことで、いざというときの対応がスムーズになります。
たとえば、認知症気味の祖母を連れて移動した家族が、あらかじめお気に入りの飴とハンドタオルを用意しておいたことで、酔いかけた際にも不安を和らげることができたと話しています。
つまり、介助者のちょっとした配慮が、体調の悪化を未然に防ぎ、快適な移動時間を支える大きな力になるのです。
それでも酔ってしまった時の最終対処法
嘔吐対策とトイレの使い方
万全な対策をしても、体調や環境によっては新幹線酔いを完全に防げないこともあります。そんな時に備えて、嘔吐への対処法を事前に知っておくことは非常に重要です。
まず、嘔吐を感じた場合は、無理に我慢しないことが鉄則です。新幹線には各車両に1〜2か所のトイレが設置されており、嘔吐しそうになった際には、できるだけ早くトイレへ向かいましょう。グリーン車や多目的トイレのある車両の近くを予約しておくと、緊急時に対応しやすくなります。
たとえば、30代男性が京都〜東京間で突然気分が悪くなり、通路側の席を選んでいたことでスムーズにトイレへ移動でき、車掌の協力も得て大事に至らなかったという実例があります。
また、乗車前にエチケット袋やウエットティッシュを持参しておくと、いざというときでも落ち着いて対応できます。
車掌・乗務員への相談のしかた
新幹線で体調が悪くなった場合、遠慮せずに乗務員へ相談することが大切です。多くの乗務員は応急処置の訓練を受けており、医療機関への連絡、車内の座席移動、空調の調整など、状況に応じた対応をしてくれます。
緊急時は、車両のデッキに設置された「非常通報ボタン」や、近くの乗務員に直接声をかけることで連絡できます。
たとえば、50代の女性が吐き気で座っていられなくなった際、近くの人が乗務員に声をかけたことで、多目的スペースに案内され、横になって休むことができたという報告もあります。
体調が悪いときこそ、周囲の助けを求める勇気が必要です。遠慮せず相談しましょう。
次回に向けた改善点をメモしておこう
乗り物酔いを繰り返さないためには、「何が原因だったのか」「どんな対処をしたか」をその都度記録しておくことが効果的です。
たとえば、食事の内容や時間、座席の場所、当日の睡眠時間、薬の有無、ストレスの度合いなどを記録しておくと、次回の乗車時に参考になります。
ある会社員は、新幹線に乗るたびに簡単な乗車記録をスマホに残しておくようにした結果、自分にとって最も酔いにくい条件(中央部の窓側・前日の7時間睡眠・空腹を避ける)を把握でき、以降ほとんど酔わなくなったそうです。
自分の体調や環境に合わせた最適な対策を見つけるためにも、経験を積み重ねていくことが大切です。
まとめ
「新幹線で酔う」という悩みは、以前よりも多くの人が抱える現代的な問題です。その背景には、スマホの使用時間増加、生活リズムの乱れ、ストレス社会といった要因が関係しています。
しかし、原因を正しく理解し、適切な対策を講じることで、多くのケースで症状を和らげることが可能です。揺れに強い座席の選び方、前日の体調管理、乗車中の呼吸法やストレッチ、ツボ押しといった工夫はすぐに取り入れられる実践的な方法です。
また、子どもや高齢者のように体調を言葉で表現しにくい人には、周囲の配慮とサポートが何よりも重要になります。
すべての人が安心して快適に新幹線に乗れるよう、知識と準備を持って移動に臨みましょう。少しの工夫が、旅の質を大きく変える鍵になります。