Windows 11の起動速度が遅いと感じたことはありませんか?電源ボタンを押してからデスクトップが表示されるまでの時間が長いと、日々の作業にストレスが溜まってしまいます。そんな悩みを解決するための機能が「高速スタートアップ」です。しかし、この便利な機能には落とし穴も存在します。本記事では、Windows11の高速スタートアップの仕組みやメリット・デメリットを、具体的な事例を交えて徹底解説します。
例えば、ノートPCを毎日持ち運びして仕事に使っている人にとって、高速スタートアップは時間を節約できる便利な設定です。一方で、自作PCユーザーやドライバの更新が頻繁な環境では、不具合の原因となる場合もあります。つまり、単に「速くなるからONにする」といった表面的な理解ではなく、自分のPC環境や利用目的に合わせた最適な設定が求められます。
この記事では、Windows11高速スタートアップというキーワードを軸に、基本的な仕組みから設定方法、不具合対策まで網羅的に解説します。誰でも簡単に理解できるよう、画面操作の説明や用語の意味も丁寧に説明していますので、ぜひ参考にしてください。
それではまず、高速スタートアップの仕組みと目的について見ていきましょう。
高速スタートアップとは何か?仕組みと目的を理解しよう
Windows 11における高速スタートアップの役割
高速スタートアップとは、Windowsが起動時間を短縮するために設けた仕組みの一つで、電源を切るときに「完全なシャットダウン」をせず、カーネルやドライバ情報など一部のシステムデータをハイバネーションファイル(hiberfil.sys)に保存しておくことで、次回起動時にゼロからすべてを読み込む必要がなくなる機能です。
Windows 11ではこの機能が初期設定で有効になっており、特にHDDを搭載した古いPCでは起動時間を体感で大きく改善できる場合があります。スタートアップの高速化という意味では、PC利用時のストレスを軽減する手段として非常に効果的です。
たとえば、朝一でノートPCを開いてすぐ作業を始めたいビジネスマンにとって、起動時間の短縮は「作業開始までの待ち時間」という無駄を省く効果があります。それゆえに、時間を効率的に使いたい人ほど高速スタートアップの恩恵を受けやすいといえます。
しかしながら、この機能は再起動とは異なる動作をするため、後述するように不具合の原因になるケースもあります。
通常のシャットダウンやスリープとの違い
通常の「シャットダウン」は、すべてのシステムプロセスを終了させて完全に電源をオフにする操作です。一方で、「スリープ」は作業中の状態をメモリに保持したまま、低消費電力状態で待機させる方法です。
これに対して高速スタートアップは、完全なシャットダウンとスリープの中間に位置する動作で、システム部分のみを保存し、ユーザーの作業内容(開いていたアプリなど)は保存しません。つまり、画面上では電源が切れているように見えても、実際は内部的に一部の状態を保持したまま終了しているという特殊な状態です。
このため、「再起動」とは明確に違いがあります。再起動はすべてのシステムを一度終了して再読み込みするため、ドライバの更新やOSの設定反映には再起動が必要になります。高速スタートアップが有効だと、これらの変更が反映されず不具合が起こることもあります。
このように、見た目は同じ「シャットダウン」であっても、背後で動作している仕組みが異なることを理解することが重要です。
起動時間を短縮できる理由
高速スタートアップが起動を高速化できる最大の理由は、シャットダウン時に保存されたシステム情報をそのまま再利用する点にあります。たとえば、OSのカーネルやデバイスドライバの状態などをハイバネーションファイルとしてHDDやSSDに保存しておくことで、次回起動時にこれらの情報を一から読み込む必要がなくなるためです。
これは「冬眠(ハイバネーション)」に似た仕組みで、PCを一度仮眠状態にしておき、次に目覚める際には前回の状態から再開するようなイメージです。だからこそ、完全なシャットダウンよりも早くWindowsが起動し、ログイン画面に到達するまでの時間が短縮されるのです。
たとえば、同じPCであっても高速スタートアップが有効な状態と無効な状態では、起動にかかる時間に5~15秒程度の差が出ることもあります。特にSSDを搭載していないPCではこの差が顕著に感じられるため、日々の使用において「起動時間が速くなった」と実感しやすいでしょう。
したがって、限られた時間内で作業したい人にとって、高速スタートアップは非常に有効な起動高速化の方法となります。
高速スタートアップを有効にするメリット
起動時間の短縮による利便性向上
高速スタートアップを有効にする最大のメリットは、PCの起動時間が短くなり、利便性が大きく向上する点です。特にWindows 11では、システムの機能が増えたことにより、従来よりも起動時の処理が多くなっています。その結果、全体的な起動時間が長くなりがちです。
この問題を解消するために、高速スタートアップを活用することで、OSカーネルやドライバ情報を前回の状態から復元できるため、再度すべての構成要素を読み込む必要がなくなります。これは、PCの電源を入れた直後からすぐに作業を開始したいユーザーにとって非常に大きな利点となります。
たとえば、毎朝出勤後すぐにPCで会議資料を開いてミーティングを開始する必要がある職場では、1分でも短い起動時間が仕事のスムーズさを左右します。このように、高速スタートアップは、起動の待ち時間を最小限に抑えたい環境で特に有効です。
また、頻繁に再起動せず電源をオンオフする使い方が多いユーザーにとっては、シャットダウンと起動を繰り返すたびに利便性を実感できるでしょう。
PC初心者やビジネス利用における活用例
PCに詳しくない初心者や、高度な設定を必要としないビジネスユーザーにとって、高速スタートアップは非常に相性が良い機能です。なぜなら、特別な操作をせずともPCの起動が速くなるため、ユーザー側に負担をかけることがないからです。
たとえば、家庭でWordやExcelを使って家計簿をつける程度の用途であれば、起動速度が速いというだけで「このPCは使いやすい」と感じてもらえます。また、IT知識の少ない高齢の方でも、起動時間が短くなるだけで操作が楽になるため、導入のハードルが下がります。
一方、ビジネスシーンでは、営業職や外出の多い職種のユーザーがモバイルPCを利用する際に恩恵が大きいです。たとえば、外出先で急にプレゼン資料を開かなくてはならない場面でも、数秒で起動できるPCは強い味方となります。
このように、クリック一つで電源を入れ、素早く作業に取り掛かれることが高速スタートアップの魅力の一つです。
バッテリー持続時間の延長効果
高速スタートアップを有効にしていると、間接的にバッテリーの持続時間が延びる場合があります。これは、起動処理が簡略化されることで、PCの消費電力が抑えられることが一因です。
たとえば、再起動ではすべてのサービスやドライバを再読み込みする必要があるため、そのプロセス中に電力を多く消費します。しかし、高速スタートアップではそれらの情報があらかじめ保存されているため、電源ボタンを押してからログイン画面までの処理にかかる電力を削減できるのです。
もちろんこの差は微々たるものかもしれませんが、1日何度も電源のオンオフを繰り返すような使い方では、年間を通して見ればバッテリーの劣化にも好影響を与える可能性があります。
たとえば、大学生が一日中ノートPCを持ち歩いて授業やレポート作成に使うような場面では、少しでも電源消費を抑える設定は重要な要素となるでしょう。
このように、高速スタートアップは単なる起動時間の短縮だけでなく、PC全体の電源効率改善にもつながる便利な機能なのです。
高速スタートアップのデメリットと注意点
再起動との違いによるシステム不具合の可能性
高速スタートアップは起動時間を短縮できる便利な機能である一方、再起動との動作の違いがトラブルを引き起こす可能性があります。これは、高速スタートアップでは「完全なシャットダウン」が実行されず、一部のシステム情報が保存されたままとなるためです。
たとえば、Windows Update やドライバの更新、セキュリティパッチなどは、通常再起動によって反映されます。しかし、高速スタートアップが有効になっていると、これらの更新内容が完全に適用されないことがあり、システムが不安定になったり、エラーが発生したりするケースも確認されています。
具体例として、ある企業では業務用PCの大半に高速スタートアップを適用していたところ、ウイルス対策ソフトの定義ファイルが反映されず、複数の端末で誤動作が発生したという事例があります。これは更新内容が完全に読み込まれないことが原因でした。
このように、再起動と同様の処理が求められる場面では、高速スタートアップによる中途半端な終了処理が障害につながることがあるため注意が必要です。
デバイスドライバや周辺機器の認識エラー
高速スタートアップはシステム情報を保持したままPCを終了するため、一部のデバイスドライバが再読み込みされないという問題が発生します。その結果として、周辺機器が正しく認識されないトラブルが起こることがあります。
たとえば、USB接続のマウスやキーボード、外付けHDDなどを使用している場合、PC起動時にこれらのデバイスが認識されず、一度抜き差ししなければ動作しないという現象に悩まされることがあります。
これは、前回のセッション情報をシステムが保存していることで、デバイスの接続状態が正確に再認識されないことが原因です。特に、Bluetooth機器やネットワークアダプタではこの現象が起こりやすく、PC初心者にとっては「なぜ使えないのか分からない」という混乱を招きやすい問題です。
このような周辺機器の不具合が頻発する場合は、高速スタートアップを一時的に無効にして様子を見ることが対処法として有効です。
アップデートやシャットダウンの不具合
高速スタートアップが原因で、Windows Updateが正常に適用されなかったり、シャットダウン後に画面が消えずにフリーズしたように見える不具合が発生することがあります。
たとえば、「シャットダウン」を選んで電源を切ったにもかかわらず、数分後にPC本体の電源ランプが点滅したまま残っていたり、ファンが止まらないといった症状が報告されています。これらは、高速スタートアップがOSの完全終了を妨げていることが原因であるケースが多いです。
また、Windows Updateの一部がインストール中に「再起動を完了できませんでした」と表示され、アップデートが永遠に繰り返されるトラブルも、高速スタートアップが有効な場合に多く見られる典型的な不具合です。
こうした問題が頻発する場合、電源オプションから高速スタートアップを無効にすることが根本的な解決策になる可能性があります。
高速スタートアップの状態を確認する方法
コントロールパネルから確認する手順
高速スタートアップが現在有効になっているかどうかを確認するには、コントロールパネルを使った方法が最も分かりやすく簡単です。以下の手順に従えば、数クリックで設定状況を確認できます。
1. スタートメニューを開き、「コントロールパネル」と入力して検索します。
2. 「システムとセキュリティ」を選び、その中の「電源オプション」をクリックします。
3. 左側のメニューから「電源ボタンの動作を選択する」を選択します。
4. 表示された画面に、「高速スタートアップを有効にする(推奨)」という項目が表示されていれば、それが現在の設定状況です。
この手順では、電源関連の設定画面にアクセスし、項目のチェック状態を目視で確認するだけなので、PC初心者にもおすすめです。特に設定を変更する必要がない場合でも、確認だけしておくことでトラブル時の原因特定がしやすくなります。
また、企業などで複数のPCを管理している環境では、チェックツールやスクリプトを活用して一括で設定状態を確認する方法もありますが、個人利用の場合はこの手順で十分対応可能です。
電源オプションの設定画面の見方
電源オプションの画面は、高速スタートアップの状態だけでなく、スリープやシャットダウンの動作設定も同時に確認・調整できる重要なポイントです。特に、ノートPCでは電源ボタンや蓋の開閉による動作もここで設定できます。
「電源ボタンの動作を選択する」画面では、上部に現在使用している電源プランの概要が表示され、下部にシャットダウン設定が記載されています。その中に「高速スタートアップを有効にする(推奨)」というチェックボックスが表示されていれば、現在この機能が有効になっているかどうかを判断する指標になります。
もしこの項目がグレーアウトして変更できない場合、システム権限での操作やレジストリの調整が必要になるケースもあります(これについては後述します)。
電源オプションはPCの動作に大きく関わる設定が集約されているため、設定内容を把握しておくことで、将来的なトラブルの回避やパフォーマンス向上につながります。
有効/無効状態の判断ポイント
高速スタートアップの設定が有効か無効かを判断するには、上述のチェックボックスの状態を確認することが第一の方法です。ただし、チェックが外れていてもシステム側で有効になっていることがあるため、場合によってはコマンドプロンプトでの確認も併用すると安心です。
コマンドで確認するには、以下の手順を実行します。
1. スタートメニューから「cmd」と入力し、コマンドプロンプトを右クリックして「管理者として実行」を選択します。
2. 以下のコマンドを入力してEnterを押します。
powercfg /a
3. 表示された結果の中に「高速スタートアップ」が含まれていれば、有効になっている状態です。逆に「使用できません」と表示される場合は無効になっているか、サポートされていない環境です。
この方法は、見た目では判断しづらい状態でも、確実に現在の設定状況を把握できるという利点があります。
なお、管理者権限で操作できない場合は結果が表示されないことがあるため、必ず「管理者として実行」を選ぶようにしてください。
高速スタートアップを無効にする方法【初心者向け】
ステップ①:「電源の追加設定」を開く
高速スタートアップを無効にするには、まず「電源オプション」画面にアクセスする必要があります。Windows 11では、設定アプリ経由では項目が見つけにくいため、コントロールパネルを使用したほうが確実です。
以下の手順で操作してください。
1. スタートメニューを開き、「コントロールパネル」と入力して検索。
2. 「システムとセキュリティ」→「電源オプション」を選択。
3. 左側メニューから「電源ボタンの動作を選択する」をクリック。
この画面では、高速スタートアップを含むシャットダウンの動作設定を変更するための基本的な設定項目が表示されます。なお、表示されない場合は、Windowsのバージョンやログインアカウントの種類(標準ユーザーか管理者か)を確認してください。
この「電源の追加設定」画面を開くことで、以降の設定変更が可能となります。
ステップ②:「現在利用可能でない設定を変更」
前述の手順で「電源ボタンの動作を選択する」画面を開くと、一部の項目がグレーアウトされていて変更できない場合があります。これを変更可能にするためには、画面上部に表示されている「現在利用可能でない設定を変更」というリンクをクリックします。
この操作により、シャットダウン設定の項目が編集可能な状態に変わります。ここが初心者のつまずきやすいポイントであり、「チェックボックスが無効になっている=設定できない」と勘違いされがちです。
実際には、このリンクをクリックするだけで編集権限が与えられるため、以降の操作がスムーズに進みます。管理者アカウントでログインしている必要がありますが、標準アカウントでも管理者パスワードを入力すれば変更可能です。
このステップは一見見逃しやすい部分ですが、設定変更を可能にする重要な入口です。
ステップ③:「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外す
最後に、「シャットダウン設定」内にある項目から「高速スタートアップを有効にする(推奨)」というチェックボックスを探し、そのチェックを外すことで、機能を無効化することができます。
設定後は、画面下部の「変更の保存」ボタンをクリックして確定させてください。これで設定変更が反映され、次回以降のシャットダウンでは高速スタートアップが無効化されます。
この手順を完了すると、シャットダウン時にすべてのプロセスが終了し、PCは完全なオフ状態になります。たとえば、ドライバの更新を完全に適用したい場面や、トラブル発生時の原因切り分けを行いたい場合などでは、無効化しておくことが有効です。
また、設定はいつでも元に戻すことができるため、状況に応じてオン・オフを使い分けるのが賢い活用方法です。
高速スタートアップが無効にできないときの対処法
グレーアウトして変更できない場合の対応策
高速スタートアップの設定を変更しようとしても、チェックボックスがグレーアウトされていて操作できないというケースがあります。このような場合、まず確認すべきは「現在利用可能でない設定を変更」というリンクをクリックしたかどうかです。
このリンクをクリックすることで、Windowsが管理者権限による設定変更を許可し、非表示だったオプションが有効化されるようになります。もしクリックしても操作できない場合は、次のような原因が考えられます。
- 標準ユーザーアカウントでログインしている
- 会社のポリシーなどによりシステム設定が制限されている
- 何らかのセキュリティソフトが変更をブロックしている
このような状況では、管理者アカウントへの切り替え、またはIT管理者への問い合わせが必要になります。
また、一部のセキュリティ対策ソフトが「重要なシステム設定の変更を防止する機能」を有効にしている場合、電源オプションの変更もブロック対象になることがあります。その際は、一時的にセキュリティソフトの保護を無効にして操作を行うと改善することがあります。
グループポリシーやレジストリの確認
高速スタートアップがどうしても無効にできない場合、グループポリシーやレジストリの設定によって制御されている可能性があります。これは特に企業や教育機関などで導入されているPCで多く見られるパターンです。
グループポリシーを確認するには、以下の手順を実行します。
1. スタートメニューで「gpedit.msc」と入力して実行。
2. 「コンピュータの構成」→「管理用テンプレート」→「システム」→「電源管理」→「シャットダウンの設定」に進む。
3. 該当するポリシーが有効になっている場合は、「高速スタートアップを無効にする」が有効化されているかを確認します。
一方、レジストリを使って強制的に無効化する方法もあります。ただし、レジストリエディタの操作は非常に慎重に行う必要があります。
手順は以下の通りです。
1. 「regedit」と検索して、レジストリエディタを起動。
2. 以下のパスを開きます。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Session Manager\Power
3. 「HiberbootEnabled」という名前のDWORD値をダブルクリックし、値を「0」に変更します。
この操作により、次回起動から高速スタートアップは無効化されます。ただし、操作ミスはシステム全体の不具合につながるため、自信がない場合は避けたほうが良いでしょう。
BIOS/UEFI設定の確認と変更方法
高速スタートアップの設定がグレーアウトされたまま戻らない場合、BIOSやUEFIレベルで高速起動が有効になっている可能性もあります。これは特に近年のノートPCや省電力設計のデバイスにおいてよく見られる仕様です。
BIOS/UEFI設定を確認するには、PCの起動時に「DEL」「F2」「ESC」などのキーを連打して設定画面に入ります(メーカーによって異なります)。
設定画面内にある「Boot」や「Power Management」カテゴリに、「Fast Boot」や「Instant Boot」といった名前のオプションが存在する場合は、それがWindowsの高速スタートアップと干渉している可能性があります。
これらの設定を無効にすることで、Windows側の設定変更が正しく反映されるようになることがあります。なお、BIOS設定の変更には再起動が必要です。また、誤った設定を変更すると起動できなくなる可能性があるため、事前に設定内容をメモしておくことを推奨します。
このように、Windowsの画面上で変更できない場合でも、複数のレイヤーで原因を探ることで解決の糸口が見つかるはずです。
高速スタートアップが原因で発生する代表的な不具合
USB機器が認識されない問題
高速スタートアップを有効にした状態では、USB機器が起動時に正しく認識されないという問題が発生することがあります。これは、Windowsが前回の電源オフ時のシステム状態をそのまま引き継ぐため、一部の周辺機器が再検出されないためです。
たとえば、外付けのHDDやUSBメモリ、さらにはキーボードやマウスなどが、電源を入れても動作しないというトラブルがよく報告されています。一度USBを抜き差しすることで復活することもありますが、それでは毎回の操作が煩雑になってしまいます。
このような不具合は、ドライバが正しく再初期化されないことで発生します。特に、USB 3.0ポートやType-Cハブを経由している場合は発生頻度が高く、高速スタートアップを無効にすることで安定動作が得られることが多いです。
Windows Updateが適用されない現象
高速スタートアップが有効になっている状態では、Windows Updateが一部適用されない、あるいは更新が途中で止まってしまうといった現象も報告されています。
Windows Updateは、再起動時に構成を完了する仕組みを採用していますが、高速スタートアップが有効だと再起動のように完全なシステム再初期化が行われず、「更新を完了できませんでした」や「アップデートが失敗しました」などのエラーが発生しやすくなります。
たとえば、月例アップデート後に再起動を要求されるタイミングで、高速スタートアップが有効なままだとアップデート内容が反映されないというケースがあります。その結果、何度再起動してもアップデートが終わらない状態に陥り、システムの安定性に影響を与える可能性があります。
このような事態を避けるためには、アップデート適用前後だけでも高速スタートアップを無効にすることが有効な対策となります。
ソフトウェアが正常動作しないケース
一部のソフトウェア、特にセキュリティ関連ソフトやネットワーク接続に依存するアプリケーションでは、高速スタートアップの影響で正常に動作しなくなることがあります。
たとえば、VPNクライアントソフトが高速スタートアップ有効時に自動接続できず、ユーザーが毎回手動で設定し直さなければならないというトラブルが発生することがあります。これは、前回のセッション情報が保持されていることで、一部のサービスが再起動されないために起きる現象です。
また、ウイルス対策ソフトが一部機能しない、ファイアウォールが無効化される、あるいはライセンス認証が毎回リセットされるといったケースも確認されています。特に、業務用ソフトや常駐型アプリでは影響が大きく、高速スタートアップを無効にすることでトラブルを解消できる場合が少なくありません。
このように、高速スタートアップは便利な反面、一部のアプリケーションと相性が悪いことがあるということを認識しておく必要があります。
高速スタートアップの有効・無効を使い分けるシーン
パフォーマンス重視か安定性重視かで選ぶ
高速スタートアップを使用するかどうかの判断基準として、パフォーマンスを重視するか、安定性を重視するかが重要なポイントとなります。
たとえば、最新のスペックを備えたPCで、日常的に軽い作業しかしない場合は、起動時間を少しでも短縮できる高速スタートアップが非常に有効です。クリックして電源を入れたら、数秒で画面が立ち上がる快適さは、業務効率や作業のリズムにも好影響を与えます。
しかしながら、定期的にシステムを再構築したり、ドライバの更新が頻繁なPC環境では、高速スタートアップによる情報の一部保持が障害につながることもあるため、安定性を優先して無効にするのが望ましいケースもあります。
このように、自分の利用スタイルに合わせて、起動の速さを取るか、不具合のリスクを減らすかという観点から使い分けるのが現実的です。
持ち運び用ノートPCと据え置き型PCの違い
使用しているPCのタイプによっても、高速スタートアップの活用方法は変わってきます。
たとえば、持ち運びが前提のノートPCでは、スリープや高速スタートアップを併用することで、作業の中断と再開が非常にスムーズになります。特に、出先で頻繁に電源のオン・オフを繰り返すユーザーにとっては、高速スタートアップを有効にしておくことで、わずかな電源操作の時間も節約できます。
一方、デスクトップ型の据え置きPCでは、起動時間よりもシステムの安定性やカスタマイズ性を重視する場面が多いため、不具合回避のために無効にしておく方が適しているケースもあります。
また、自作PCなどでは、周辺機器との相性やOSの細かな挙動に気を配る必要があるため、高速スタートアップは必ずしも推奨されるわけではありません。
このように、PCの設置環境や用途に応じて、柔軟に設定を使い分けることが鍵となります。
家庭用・業務用でのおすすめ設定
家庭用PCと業務用PCでは、求められる使用感や信頼性が異なるため、高速スタートアップの設定方針も変わります。
家庭用では、すぐに使える快適さが重視されることが多く、特にPC初心者や年配の方には、高速スタートアップが有効になっていた方がストレスなく操作できる傾向があります。たとえば、子どもが学習用に使うPCでは、電源を入れてすぐに画面が表示される方が、集中力を途切れさせることなく学習に取り組めるでしょう。
一方で、業務用PCでは、セキュリティ対策やシステムの安定性が最優先されるため、不具合やアップデートの影響を最小限に抑える目的で、高速スタートアップを無効にしておくことが推奨されます。
また、社内で一括管理されている環境では、ドライバやソフトウェア更新のたびに不具合が起こるリスクを考慮し、最初から高速スタートアップをオフにしている企業も少なくありません。
このように、使用目的と環境に応じて最適な設定を選ぶことが、トラブル回避にもつながります。
まとめ:Windows 11の高速スタートアップと上手に付き合う方法
有効・無効の切り替えはいつでも可能
高速スタートアップは、設定をいつでも変更可能である点が大きな特徴です。一度有効にしても、不具合や動作の違和感があればすぐに無効にできる柔軟さがあります。
たとえば、あるときは起動時間の短縮を優先して設定をオンにし、ドライバ更新やWindows Updateのタイミングでは無効にしておくといった運用も可能です。このように、使い方に応じて最適な設定を都度見直せる点が、Windows 11の電源設定の強みでもあります。
初心者でも手順を覚えてしまえば簡単に操作できるため、難しい知識は不要です。
定期的な再起動で不具合を回避しよう
高速スタートアップを使っていると、再起動の回数が減ってしまう傾向があります。しかし、Windowsはシステムの安定動作のために、定期的な再起動を前提としている設計になっていることも事実です。
そのため、たとえ不具合が出ていなくても、1週間に1回は再起動を行うように心がけると、メモリの解放やシステムの再読み込みが行われ、不具合の予防になります。
特に、長期間PCをスリープやシャットダウンでしか運用していない場合は、再起動のタイミングを意識的に取り入れることが大切です。
PC環境に最適な設定を選択することが鍵
高速スタートアップは万能な機能ではありませんが、使用環境や目的に応じて活用することで、快適なPCライフを実現する鍵となります。
たとえば、ビジネス用途でセキュリティや安定性が重要な場合には無効化が推奨されますし、自宅でサクッと使いたいだけなら有効にしても大きな問題にはならないでしょう。
また、トラブルが発生した際に高速スタートアップが原因かどうかを切り分けることができるよう、この機能の動作原理を理解しておくことも非常に重要です。
最終的には、どちらが正解ということではなく、自分にとって最適なバランスを見つけることが、高速スタートアップと上手に付き合うポイントとなるのです。