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闇バイトは注意喚起だけで防げるのか、親の監視論が危うい理由

コラム
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闇バイト対策で一番大事なのは、子供に「やるな」と教えることだけではない。むしろ必要なのは、危ない募集に触れた子供が、怒られる前に相談できる導線を作ることだ。

高市早苗氏はXで、子供達が闇バイトに関わり、凶悪な犯罪を実行する事案が相次いでいるとして、保護者や子供と接する大人に向けて資料の確認を呼びかけた。これは重要な注意喚起である。ただし、この種の話題で反応がズレやすいのは、問題を「子供が知らないから引っかかる」「親が見張れば防げる」「悪いことをした本人の責任だ」と単純化してしまう点にある。

もちろん、闇バイトが犯罪であることを教える必要はある。甘い言葉で高額報酬をうたい、荷物の受け取り、口座の譲渡、名義貸し、見張り、運搬などを軽い作業のように見せる募集は危険だ。入口では「簡単」「即日」「誰でもできる」と見せ、途中から身分証や住所、家族情報を握り、抜けられない状態に追い込む。だから知識は防御になる。

しかし、知識だけでは足りない。闇バイトに近づく子供は、必ずしも何も知らないわけではない。金が必要、居場所がない、誰にも頼れない、認められたい、今の苦しさから逃げたい。そうした状態にある子供にとって、危ない募集は「犯罪への入口」である前に、「今すぐ状況を変えられそうなもの」として見えてしまう。ここを見落とすと、大人の対策は注意喚起で止まる。

親がスマホを厳しく管理すればよい、という反応も出やすい。だが、本当に危ないのは、親に見られない場所で何かが起きていることではなく、見つかった瞬間に叱られると子供が思い込んでいることだ。監視を強めるほど、子供は隠す技術を覚える。危険な相手に脅された時も、親に言えば怒られる、学校に言えば大ごとになる、警察に言えば自分も捕まるかもしれないと思い、黙り込む。

闇バイト対策で必要なのは、監視よりも先に「戻ってこられる場所」を作ることだ。たとえば家庭では、「怪しい募集を見た」「応募してしまった」「個人情報を送った」という段階で、まず叱らずに聞くと決めておく。これは甘やかしではない。犯罪組織が子供を支配する最大の武器は孤立だからだ。大人に相談できない子供ほど、相手の脅しに従いやすくなる。

学校や地域にも役割がある。授業で「闇バイトは危険」と伝えるだけではなく、どんな言葉で募集されるのか、応募後にどう脅されるのか、途中で怖くなったら誰に相談するのかまで具体化する必要がある。抽象的な道徳より、実際の逃げ道を教える方が子供を守る。

自己責任論も危うい。もちろん、犯罪に加担すれば責任は発生する。被害者がいる以上、軽く扱うことはできない。しかし、入口の段階で「そんなものに応募する方が悪い」と言い切る社会では、迷っている子供は相談しなくなる。責める言葉は、犯罪組織より先に子供の口を塞ぐことがある。

今回の注意喚起を受けて大人がやるべきことは、資料を読むだけで終わらせないことだ。資料を読んだうえで、家庭や学校の中に相談の合図を作る。「変なバイトを見たら、怒らず一緒に確認する」「個人情報を送ってしまっても、まず助ける」「怖くなったら途中でも戻ってきていい」。この約束を先に伝えておく。

闇バイトは、注意喚起だけでは止まらない。知らない子が落ちるのではなく、逃げ場のない子が選ばされる。大人が安心する資料と、子供を救う導線は別物だ。だから次にやるべきことは一つ。家庭や教室で、「叱る前に相談を受ける」というルールを言葉にしておくことだ。